《MUMEI》
わたしの外見
.


わたしの容姿は、ひとの心を惹きつけてやまない、華やかな魅力に溢れているそうだ。

わたしを見ると、心がざわついて、引き裂かれるように切なくなるらしい。わたしが、一体どんなふうに笑うのか、その目でどうやってモノを見つめるのか、知りたくなるのだという。

中学生の頃、雑誌モデルをしていたとき、担当だったカメラマンが、そう話してくれた。

でも、わたし自身には、それがよくわからなかった。

毎朝、鏡を覗き込んでも、特別な気持ちになることはない。なんてことはない、どこにでもいるような、フツーの顔。

だから、周りのひとの、わたしの外見に対する褒め言葉や、わたしに向ける視線を、理解することが出来なかった。


けれど、カメラマンがあのとき、言った言葉は、真実だったのかもしれない。


あるとき、まだ中学生だった頃、雑誌の編集部に、ある男のひとから、執拗に手紙やメールが送られてきた。詳しい内容は教えてくれなかったけれど、それらを呼んだ両親の青ざめた顔を、わたしは忘れたことがない。

それをきっかけに、両親の意向もあって、モデルの仕事は辞めた。

元々、やりたかった仕事じゃなかった。お父さんの知り合いに頼み込まれて、渋々始めたものだったから、未練もなにも、なかった。

.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫