《MUMEI》
ドクターと呼ばれた男
加奈子は今聞いたリョウの記憶を整理した。

「じゃあ、その男の人が口止めの為に女性を殺したんだとしたら、あのニュースで言ってた事は嘘…?」

「そういう事だな。きっと警察に行く前に接触してるんだと思う。」

「…て事は」


「俺の…この事を知っている奴が他にいるってわけだ。」

リョウは加奈子に手を見せた。

「その男の人、何か知ってるのかな?」

「多分ね。きっと世間に知られちゃまずい事なんだ。だから口止めを‥」


リョウがこんな風になっちゃった原因…
もし知っているのなら…


「ねぇ、その人の特徴とか思い出せない?」

加奈子はリョウに迫る。

もしかしたらその人間がリョウを普通の人間に

リョウの中に潜む悪魔を消し去る方法を知っているかも知れないと思った。

しかし、リョウからの反応は何もなかった。


「やっぱ思い出せない?」

折角一筋の光が見えた気がしたのに…


「少しでもいいの!何でもいいからっ!!」



眉間に皺を寄せたまま、一生懸命思い出そうとしているリョウ。
加奈子はじっとそれを見守っていた。


少しでも思い出してくれれば、それが手掛かりに…


「一つだけ…」

数分後、漸くリョウが口を開いた。


「一つだけ思いだした。」「何!?」

「顔はハッキリ覚えてないんだけど…ドクター‥」

「ドクター?」

「そう、ドクター。その男はそう呼ばれていた。」



リョウが言ったその時だった


―♪♪♪♪―


突然、加奈子の携帯が鳴りだした。

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