《MUMEI》
祐とデート
朝食を食べ終わると、高遠光と小暮さんは挨拶をして出ていった。


「祐也、デートしようか」

「は?」

「だって雅樹仕事モード入っちゃったから。俺と食べ歩きしようぜ」


祐の言う通り、葛西先輩は、完全に普段と人格が変わっていた。


「俺、腹減ってないけど」

「俺は別腹空いてる。行こ」


結局俺は祐に連れ出された。


「祐也は明日帰るのか?」

「あぁ」

「俺は今日なんだ。明日はバイトあるし」


祐は、専門学校指定の中華料理店でバイトをしていた。


「バイトはどうだ?」

「新鮮だよ。誰も『高山』を知らないからね」


『高山一族を知らない店でバイトする』


それは、大志さんから祐への課題だった。


「改めて、俺、箱入りで大事にされてたんだって思った。今回だって、ずっと雅樹といたかったけど、『三連休全部休むならクビだ』って言われたしね」

「まぁ、稼ぎ時だからな」


実際、遠藤家を出て、市街地に着いたのは丁度昼時で


ところどころ、観光客が店の前に行列作っていた。


「まぁ、頑張れよ」

「祐也もね。球技大会サボった分、頑張りなよ」


祐の励ましの意味を知るのは月末だった。

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