《MUMEI》 . 彼女達の手が、わたしの制服や、髪の毛や、耳や、腕や、とにかく掴みやすい場所を狙い、物凄い力で引っ張るのだ。 ………こ、殺される!! 身の危険を感じたわたしは、死ぬ気で彼女達から逃れ、地面を這い、命からがら、その群集から抜け出す。 少し距離を置いてから振り返ると、女の子達はわたしがそこから抜け出したことに気づかず、いまだ必死な様子で争っていた。 ………今のうちに! わたしは彼女達をそこに残したまま、全力で逃げ出したのだった。 ◆◆◆◆◆◆ −−−逃げて逃げて、とにかく逃げて。 めちゃくちゃに走り回っているうちに、この場所へたどり着いた。 ここが一体どこなのか、見当もつかないが、もはやそれも、どうだっていい。 キンモクセイが香るこの中庭で、わたしは、ゆっくり空を見上げた。 高く澄んだ青空は、わたしの頭上を、どこまでも広がっている。 ようやく穏やかな気分になったが、この先のことを考えると、すこぶる不安だった。 . 前へ |次へ |
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