《MUMEI》 . ドギマギしているわたしの様子を不思議に思ったのか、彼は、わたしの顔を覗き込むように、腰をかがめた。 「大丈夫?具合、悪いの?」 優しい声が、耳元で囁く。 それだけで、気絶しそうだった。恥ずかしくて、軽く死にそうだ。 ………もう限界ッ!! わたしが固く目をつむった、 そのとき、 「どうしたの?だれかいた?」 涼やかな女の子の声が、聞こえてきた。 どこか聞き覚えのある、その淡々とした抑揚に、わたしは目を開け、恐る恐る顔をあげた。 すると、さっきまで顔を近づけていた彼も、女の子の声に反応したように、後方を振り返っていた。 少しホッとしながら、わたしも、彼の視線を追った。 わたしと彼がいる所から、少し離れた場所に、彼女はいた。 彼女の顔を見て、わたしは驚き、 その名前を呟く。 「小田桐さん…?」 つづけて現れたのは、クラスメイトの小田桐さんだった。 . 前へ |次へ |
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