《MUMEI》
気になるカンケイ
.


−−−放課後の校舎は、昼間の賑やかさが嘘のように、ひっそりと静まり返っている。



わたしは、小田桐さんに連れられて、長い廊下を歩いていた。


ふたりの間に、会話はなかった。


ただ、ふたつの足音だけが、静かな廊下の中を反響している。


わたしはまえを行く、小田桐さんの華奢な背中を見つめた。歩くたび、彼女の柔らかそうな長い黒髪が、サラサラと揺れていた。



その様子を眺め見ながら、


考える。



…………彼女とあの男のひとは、どういう関係なのだろう。



知り合い、ということは、わかる。彼にファーストネームで呼ばれていたくらいだ。きっと、親密な間柄なのだろう。彼らの周りを取り囲む空気も、穏やかで優しいものだったから。


《親密》、っていっても。


一体、どこまで………?


友達?それとも、親戚?


………もしかして、



恋人、とか−−−?



「中塚さん?」



不意に小田桐さんに呼ばれて、わたしはハッと我に返った。


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