《MUMEI》 . 彼女はわたしの顔を見て、不思議そうな顔をしている。 「教室、着いたわよ?」 つづけて、入らないの?と尋ねてくる。 わたしは質問には答えず、ただ、小田桐さんの顔を見つめる。 彼女の姿と、例の彼の笑顔が重なって見えた気がして、すごくモヤモヤした。 だから、 「あの、さ……」 思っていたことを、つい、口にしてしまった。 「さっき、どうして、あそこにいたの?」 本当は、どうして彼とあそこにいたの?と聞きたかったのだけれど、そこまではっきり尋ねる勇気が、なかった。 わたしの質問に、彼女は首を傾げる。 「この学校の生徒だもの。校内にいても、べつに不思議じゃないでしょう?」 なにを言っているんだ、と言わんばかりの口調だった。 わたしは俯く。 ………そういうイミじゃ、ないんだけどな。 「それは、そうなんだけど…そうじゃなくて…」 「なに?はっきり言って?」 「…えっと、だから、なんで小田桐さんは」 −−−彼と一緒にいたの? と、どうしてもつづけられず、そこで言葉を途切れさせた。 . 前へ |次へ |
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