《MUMEI》 . しばらく黙り込んでいると、小田桐さんはなにかに気づいたように、ああ…と声をあげた。 それから、淡々と尋ねてくる。 「もしかして、『ソウ』のこと言ってるの?」 彼女の質問に、わたしは顔をあげ、眉をひそめた。 ………『ソウ』? 意味がわからず、首を傾げると、小田桐さんはそれを察したようで、補足した。 「わたしと一緒にいた、オトコのこと」 意表をつかれて、わたしは思わず口をつぐむ。見透かされたことが恥ずかしくて、顔が熱くなる。 わたしの顔を見た小田桐さんは、呆れたようにため息をつき、つづけた。 「ソウは、この学校の生徒……もちろん、男子校の方だけどね。変なヤツだけど、不審者じゃないから、安心して」 わたしは彼女の顔を見つめたまま、瞬いた。 −−−生徒?? 男子校、の? …………ってことは、 高校生?? 「…『高校生に見えないなー』、とか、思ったんでしょう?」 わたしの心の内を、小田桐さんは的確に言い当てたので、本気でビックリした。とっさに返す言葉も、見つけられないほど。 . 前へ |次へ |
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