《MUMEI》
《きっと、傷つく》
.

そこまで考えていたとき、


小田桐さんは、いつものように淡々と言った。


「ソウのこと、気になるんでしょう?」


わたしは、またまたビックリした。

小田桐さんには、ひとの心を読む力があるのではないかと、本気で思った。

図星のわたしはただ、黙り込む。なにも言い返せなかった。

わたしの姿を見つめながら、小田桐さんは、また、ため息をついて、確かに…と呟いた。


「ソウは目立つし、存在感もあるから、中塚さんの気持ちも、わからなくもないけど」


そこまで言って、言葉を区切った。

彼女はわたしから目を逸らし、教室のドアを静かに開けて、ぼんやりとした眼差しを向け、でも、とつづける。


「ソウは、ダメだよ」


わたしは彼女の横顔を見つめた。やっぱり、繊細でキレイなものだった。

小田桐さんは、ゆっくり視線を巡らせ、わたしを捕らえると、それから厳しい表情を浮かべた。

そして、今までにないくらい、固い声で、言った。





「あなたは、きっと、傷つく」





それは、とても断定的な言葉だった。


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