《MUMEI》

「光じゃないか。」

こんな夜中に子供が一人で……


「伊武監督……。」

光は妙に大人びている。
オーディションのときも、群を抜いて洞察力も勘も良く、役者としてのセンスを持ち合わせていた。
それより、惹かれたのは彼の持つ影だった。


「何処か行きたいのか?」

帰る選択というが思い付かなかった。


「朝日が昇るのを見たい。」

その為だけに、深夜を一人歩いていたのは信じ難いが強く言う気力もない。


「家からなら見れるかもしれない。」

同じ虚ろな目をして、並んで歩いた。
周りから見たら親子だろうが、俺達は同族だ。
ふと、若き詩人アルチュール・ランボオを連れたヴェレーヌを想像したが、光はランボオで違和感は無いだろうけれど俺にヴェレーヌは無理だと、自嘲した。


「楽しいこと?」

含み笑いを光に見られていた、気をつけよう。

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