《MUMEI》

.

小田桐さんが早々と帰宅してしまってからも、わたしはまだ、教室にいた。


昔のことを思い出すと、胸が押し潰されるように、息苦しくなる。悲しくて、いたたまれなくなる。


泣きたくなっている、わたしのもとに、


「見つけたッ!!」


明るい声が、届いた。

ハッとして振り返ると、教室の入口に巴達がいた。

巴はわたしの姿を見つけると、ホッとしたような顔をして、良かった!と声をあげた。


「教室にいたんだね!!急にいなくなるから、迷子になっちゃったんだって、心配したんだからぁッ!!」


その言葉を聞いて、わたしは少し胸が痛む。彼女達をほっぽらかして、逃げ出した自分に対しての罪悪感だった。

わたしが素直に、心配かけてごめんね…と謝ると、彼女達はニコニコとほほ笑んだ。


「気にしない、気にしない!」


「お姉様が無事なら、それでいいの」


「そんな悲しそうな顔、しないで!」


次々に、わたしを励ます台詞が投げかけられる。胸の奥が、じんわり熱くなっていくのを感じた。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫