《MUMEI》 . 小田桐さんが早々と帰宅してしまってからも、わたしはまだ、教室にいた。 昔のことを思い出すと、胸が押し潰されるように、息苦しくなる。悲しくて、いたたまれなくなる。 泣きたくなっている、わたしのもとに、 「見つけたッ!!」 明るい声が、届いた。 ハッとして振り返ると、教室の入口に巴達がいた。 巴はわたしの姿を見つけると、ホッとしたような顔をして、良かった!と声をあげた。 「教室にいたんだね!!急にいなくなるから、迷子になっちゃったんだって、心配したんだからぁッ!!」 その言葉を聞いて、わたしは少し胸が痛む。彼女達をほっぽらかして、逃げ出した自分に対しての罪悪感だった。 わたしが素直に、心配かけてごめんね…と謝ると、彼女達はニコニコとほほ笑んだ。 「気にしない、気にしない!」 「お姉様が無事なら、それでいいの」 「そんな悲しそうな顔、しないで!」 次々に、わたしを励ます台詞が投げかけられる。胸の奥が、じんわり熱くなっていくのを感じた。 . 前へ |次へ |
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