《MUMEI》 . わたしはオロオロしながら、ただお話しただけだから…と説明したのだが、それも無駄だった。 「あんな野蛮な奴らに、お姉様の存在が知られたなんて!!」 「神様!!どうか、お姉様に御加護をッ!!」 一向におさまる気配のない騒ぎにうんざりしていると、巴が肩を怒らせてわたしに詰め寄ってきた。 「もう二度と、『秘密の花園』に行っちゃダメよ!!オトコどもにナニされるかわかったモンじゃないんだからッ!!」 突然の禁止令に、わたしは慌てる。 「そこまでしなくても…べつにアブナイひとじゃなかったし」 「アブナイのよ!!」 言いかけたわたしの言葉を、彼女は勢いよく遮る。 「オトコなんて、みんな女の子の外見にしか興味ないし、それに、いかがわしい妄想ばっかしてるんだから!!」 最後には、自覚が足りないッ!!と怒鳴られてしまった。 彼女の勢いに押されながらも、それでもわたしは引き下がらなかった。 「い、いいじゃない。せっかくの共同スペースなんだし、共学なんだから」 しかし、巴も引かなかった。 「絶対、ダメ!!男子校の奴らは、アブナイったら、アブナイの!!」 有無を言わせない巴に、いい加減、ムッとしてくる。 「なにがそんなにアブナイの?べつに、男の子なんて、どこの学校でも同じでしょう?」 口調を強めて言うと、巴は、同じじゃない!!と怒鳴り返した。 「あの男子校にはね、超☆危険人物がいるんだからッ!!」 ………危険人物?? わたしは眉をひそめた。 「なにそれ、だれのこと?」 素直に尋ねたわたしを、巴は、そのうちわかるわよ、と軽くあしらった。 「なにかにつけて、有名なヤツだからね。ここにいれば、イヤでも知ることになるわよ」 吐き捨てるように言うと、彼女はそれきり口をつぐみ、男子校について一切語ってくれなかった。 みんなと一瞬に、歩き始めながら、わたしはもう一度、男子校を見上げた。 『ソウ』さんの笑顔を思い浮かべて、 また、逢えたらいいな……、 と、ひそかに祈った。 . 前へ |次へ |
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