《MUMEI》

「おい、俺たち目立ってるぞ」
「当然だな。これで目立たない方がおかしい」
織田は言ってハンドルを右へ切った。
車は建物の地下へと続く道を下りはじめた。
「駐車場?」
「街中で降りるよりは目立たないだろう」
車はぐるぐると渦を巻く坂道をガタガタと下り、長細いバーの前で停まった。
無機質な女の声が機械から吐き出された券を取るよう促す。
大人しく織田は券を取り、場内に車を進めた。
平日だからだろうか、駐車されている車はまばらだ。
どうやら無人らしい駐車場に、利用者の影もなかった。
織田は適当な場所に車を停車させると外に出た。
「これからどうすんだ?」
ようやく喋ることができたらしいケンイチが助手席から降りながら聞いた。
ユウゴは「そうだな……」と考えながらふと織田に視線を向ける。
「なあ、ここってどこらへんだ?」
織田から伝えられた街の名前はユウゴたちが目的地としていた街だった。
「なんだ、もうついてんじゃん。あとは奴らのとこに乗り込むだけだな」
ケンイチは軽く笑って歩きはじめた。
その後に続きながらユウゴは「お前、場所知ってんのか?」と聞いてみる。
すると彼はくるりと振り返り、わずかに胸を反らして「知るわけねえだろうが!」と言い放った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫