《MUMEI》

火柄の手が俺の腕に絡まる。
喬路は溜息を吐いて遠くを見ていた。
「……ナツ、賀もアンタと仲良くしたいってさ」
「おい、俺はそんなこと」
遠くに視線を送ったままの喬路の口から溢れた台詞に俺は柄にもなく焦る。
喬路が俺を一瞥する。
息を吐き出して、困ったように笑うのだ。
「可愛いって言ったでしょ。賀もこれを機に岬以外の友人作りなよ」
「いるし!」
声を荒げて暗に否定する。
それを冷やかに眺めて喬路が口を開く。
「何処までの? アンタは表面でしか付き合わないでしょ。自覚ぐらいあるよね?」
「……っ」
図星だった。
俺は言葉を失う。
悔しかった。
何も言い返せない自分が。
唇を噛み締めて俯く。
「あー、もう! タカちゃんもカヨちゃんも難しく考え過ぎだよっ。私、頭痛くなっちゃった。……良いじゃん、適当に仲良くすれば」
気まずくなる空気に耐えられないとばかりに火柄が割って入った。
その勢いに俺も顔を上げる。
「カヨちゃ……? 適当って。火柄さんはそれで良いんだな」
「え、カヨちゃん嫌? でもねー、賀さんじゃ他人行儀で何か嫌じゃん。やっぱりカヨちゃんが良いよ。んー、私は仲良く出来れば何でも良いの。難しいことは苦手だよ」

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