《MUMEI》 . 彼女達の言い争いを聞き流しながら、ぼんやりと視線を巡らせて、 ふと、気づく。 教室がある校舎とは、別に建てられている学食。 その近くに、あの『秘密の花園』が見えた。 わたしが『花園』を見つめて足を止めると、目ざとくそれに気づいた巴が、不機嫌そうに声をかけてきた。 「また『花園』、見てる!」 明らかに、刺を含んだ言い方に、わたしは少し萎縮する。 「ごめん…でも、気になっちゃって」 素直に謝ると、巴は呆れたのか、まったく!とため息をついた。 「なにが、そんなに気になるのか知らないけど、あそこに近づいたら、ダメだからね!」 再度、釘を刺した。 わたしは巴の顔を見つめてから、再び、『秘密の花園』へ目を向ける。 …………あの日。 『ソウ』さんと初めて出会った、転校初日から、わたしは巴達の目を盗んで、『花園』に通っていた。 もちろん、『ソウ』さんに会うためだ。 《あの場所へ行けば、きっと会える》 そう信じて、通いつづけているのだけれど、 残念ながら、あれから一度も、彼には会えていない。 . 前へ |次へ |
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