《MUMEI》

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その女の子は、長い黒髪をサラサラと揺らしながら、華奢な足で一歩、一歩、『花園』へと近づいていく。


その彼女に、見覚えがあった。



…………あれは、


小田桐さんッ!!



彼女は、間違いなく、小田桐さんだった。


気づいたのと同時に、ピンとくる。



…………『ソウ』さんが、来てるんだ!



そう思ったら、


「ごめん!用事、思い出した!」


クラスメイト達に言うなり、小田桐さんがいる方へ向かって、勢いよく駆け出した。

突然、わたしが走り出したことに、みんなが動揺して、お姉様ぁッ!!と口々に叫んでいた。

その中でも、


「まさか、『花園』に行く気ッ!?」


と、鋭く叫ぶ、巴の声が、ひときわ大きく耳に残った。



−−−ごめん、巴。


でも、わたし、


どうしても、会いたいんだ。


もう一度、


『ソウ』さんの、あの笑顔に……。



わたしは彼女達を振り返ることもせず、一心不乱に、小田桐さんの背中を追いかけた。





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