《MUMEI》
祐が来なかった理由
「そういえば、祐はバイトだったのか?」


高遠光の写真集撮影に忙しい葛西先輩はともかく


イベント好きな祐が、今日この場にいないのは、不思議だった。


「ううん。文化祭」

「文化祭?」

「そう。専門学校の」

「…行かなくて良かったのか?」

「行かないじゃなくて、行けないの?」

「…?」


「あの学校の文化祭は、料理コンテストみたいなもんだから、有名料理評論家や、一流料理人、それに大手食品メーカー関係者しか呼ばないんだよ」

「秀さんは行かなくていいんですか?」


志貴にかわって、丁寧に説明してた秀さんも、一流料理人のはずだ。


「俺は、テレビには出ないし。卒業生代表として、何回か呼ばれた事はあるけど、今年は身内がいるからね」

「なるほど」

「今日中には祐から結果がメールで来るけど、後で田中君にも教えるね」

「ありがとうございます」


それから俺達は、行きと同じように二台に別れて車に乗り


各自の家まで送ってもらった。


(ん? メール?)


ずっとマナーモードにしていた携帯をチェックすると、祐から『俺、金賞!』とメールが来ていた。

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