《MUMEI》 ユウゴは言い返すことすら馬鹿らしくなり、無言で彼の横を通り過ぎる。 そして「おまえは奴らのビルの場所、知ってるか?」と織田を見た。 織田は少し考えてから「地図では確認したが、実際に行ったことはない」と答えた。 「そっか」 ユウゴが頷いていると、追いついてきたケンイチが「おまえは知ってんのかよ」と聞いてきた。 ユウゴは当然のように頷いて見せる。 「え、追われてるくせに敵の本拠地知ってんの?」 意外そうにケンイチは目を丸くする。 「当たり前だ。俺があの男を殺したのはあいつらのビルの前だからな。まあ、中に入ってはないけど」 「へえ。じゃあ案内しろよ」 「おまえ、なんで偉そうなんだよ」 「なんで偉そうにしちゃダメなんだよ」 「ああ、もういい。おまえ、疲れるわ」 ユウゴは顔をしかめて息を吐くと、さっさと駐車場の出口へと向かった。 狭い階段を上がり地上へ出ると、どこからかサイレンの音が響いていた。 音は遠く、こちらへ向かっているわけではなさそうだ。 「で、どっち?」 ケンイチが人差し指を左右に振りながらユウゴを見る。 ユウゴは辺りを見回し、記憶を辿った。 「こっちだな」 ユウゴは一際高層ビルが建ち並ぶ方を指しながら歩きはじめた。 前へ |次へ |
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