《MUMEI》 . あのとき、彼女はせせら笑って、言ったのだ。 《寧々とわたし達は、『生きる世界』が違うもの》 『生きる世界』が、違う…。 だから、わかりあえないのだ、と言った。 小田桐さん…そして、あの日の親友も。 「………だったら」 不意に唇からこぼれた呟きに、小田桐さんは静かに、耳を澄ませていた。 目元に、じんわりとした熱を感じながら、わたしは、震える唇を、ゆっくり動かし−−−、 かつて、親友に、伝えたかった、その言葉を、呟いた。 「そんなバカげた『世界』なんて、ブッ壊してみせる」 わたしの台詞に、小田桐さんは大きく目を見開いた。 わたしはもう、堪えられなかった。ボロボロと大粒の涙が、こぼれ落ちた。 その涙を拭うこともせず、小田桐さんを、見つめつづけた。 「ひとつ残らず、ぜんぶ、壊すよ。その『世界』を壊して、お互いが、もっとわかり合えるなら…それで、最後に、傷ついてしまったとしても、わたしは、絶対、後悔しない」 今、言わなければ、たぶん一生、向き合うことが、出来ない。 自分自身の、辛い想い出に。 . 前へ |次へ |
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