《MUMEI》

『ただの風邪でしょ
う、でも熱が高いの
で、後でもう一度こ
の熱冷ましを飲ませ
て下さい。』


海里を診察した医者
は液状の飲み薬を如
月に渡した。


『先生、無理を言っ
て往診して頂いてあ
りがとうございまし
た。』


医者はニコリと笑い
部屋を出ていった。


急に意識を失った海
里をタクシーで自宅
まで連れ帰り知り合
いの医者を呼んだの
だった。


…花音の姿の海里を
病院には連れて行け
ないもんな、花音が
男だって噂になる…


医者を見送り、海里
の元へ戻る。


まだ、熱が高いのか
赤い顔で少し息苦し
そうに寝ている。


『海里…ビックリさ
せるなよな…』


そう呟きながら如月
は両手で海里の手を
取り包み込んだ。

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