《MUMEI》
金賞の価値
『おめでとう、祐』


俺がそう送信すると、すぐに携帯が鳴った。


《ありがとう、祐也!》


電話の相手は祐だった。


「金賞って、一番いいんだよな?」

《当たり前だ! 特にうちの金賞は、年によっては該当者がいないほど、価値があるんだぞ!》


(と、いうことは)


「今年は祐だけだったのか?」

《中華はね。和食と洋食は二人ずついたらしい》

「一応確認するけど、秀さんはどうだったんだ?」

《あの人は、金賞の上。特別賞を受賞した、唯一の人だよ》

「じゃあ、祐はまだまだだな」

《金賞だけでもすごいんだからな!》

「でも、そこで満足したら終わりだろ?」

《どんだけ辛口なんだよ…》


祐は、ため息をついた。


「祐の目標は秀さんだろ?

祐の才能はその秀さんのお墨付きだし。

才能や実力が無かったら、俺もここまで言わないよ」

《飴とムチ…》

「ん?」

《いや、何でもない。

…頑張る》

「体には気をつけろよ」

《ツンデレ…》

「ん?」

《いや、うん。わかった》


(電波悪いのか?)


時々祐が呟いた言葉は、俺の耳には届かなかった。

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