《MUMEI》

「何も‥ないのか‥?」

「ない」





とだけ言って、ベンチの方に歩き出した那加。





今日はさほど暑くはないから──帽子を被らなくても平気みたいだ。





「ほらぁ、日向も来て?」





手招きされて、駆け寄ると。





隣りに座るように言われて、ちょっとためらった。





「何よ、どうかしたの?」

「ぃ‥ぃぇ、どうもしてないデス」





こうやって、毎日一緒にいられる時間は──もうあまりない。





夏休みが終われば、俺は学校がある。





那加と、ずっと一緒にはいられない。

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