《MUMEI》 . 「ねぇ…」 自転車の揺れを感じながら、わたしは、義仲の背中に話し掛ける。 「あんたって、兄弟とか、いるの?」 義仲の家族について尋ねるのは、初めてだった。 彼は肩越しにチラリとわたしの顔を見ると、再び正面に向き直った。 「なんで、そんなこと聞くの?」 そっけなく返されて、わたしは言葉に詰まる。なんだか、機嫌が悪いみたいだ。 「なんでって…なんとなく…」 ぼそぼそと答えると、義仲はため息をついた。 そして、せせら笑って、言うのだ。 「興味本位は、すきじゃないなぁ」 その言い方がすごく感じ悪くて、わたしはムッとした。 . 前へ |次へ |
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