《MUMEI》
理解者
電話の相手は修二だった。
「ごめん、ちょっと出てるね。」
一応リョウに断りを要れてから電話に出た。
「彼氏から?」
電話を切ったのを見てリョウは聞いた。
聞かずとも、加奈子の顔を見ればそれは明らかなのだか…
「うん!ここ2、3日連絡とれなかったんだけど。」
そう言う加奈子の顔はとても嬉しそうだ。
「喧嘩してたんだ?」
「う〜ん‥そんなんじゃないんだけどね。ただ携帯繋がらなかっただけなの。」
「浮気してんじゃね?」
「シュウちゃんはそんな事しないもん!!」
気軽に言ったつもりが猛反発され、リョウは直ぐさま謝った。
「ごめんって!」
「ふ〜んだっ!!」
さっき迄の笑顔はどこへやら、加奈子は拗ねた様にそっぽを向いてしまった。
女ってのは、こうもコロコロ表情を変えられるものなのか?
「で?彼氏さんは何て?」
面倒臭くなり、話を変えるリョウ。
すると、また加奈子の表情がパァっと明るくなった。
「今からウチ来るって!」
「はぁ!?お前っ!バカか!俺が居んだぞ?」
これ以上自分の事を他人に明かす訳にはいかない。
リョウは今直ぐ断る様、加奈子に頼む。
しかし加奈子の返事はノーだった。
「大丈夫よ、シュウちゃんなら絶対理解してくれる。」
励ましのつもりなのか、返って来たセリフは何の根拠もないものだった。
「お前、どっからそんな自信出てくんだよ!俺は普通の人間じゃないんだぞ?そんな奴、誰が理解してくれんだよ!!」
「私。」
リョウの罵声にもうろたえる事なく、加奈子は言う。
「まぁ‥お前は別としてだな…」
その態度にリョウのペースが乱され、高ぶった気持ちが治まっていった。
「私が理解してるからシュウちゃんも大丈夫だよ!」
ビシッと胸を張って言い切られては、もう言い返す言葉もない。
それでもやはりきの進まないリョウは、なんとか引き止めようとする。
「い、いや…でも‥っ!」
―ピンポーン―
しかし無情にも玄関のベルは鳴ってしまった。
「シュウちゃんだ!!」
玄関に向かって駆けていく加奈子の後ろ姿を、リョウは不安げに見ていた。
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