《MUMEI》
それでも
.

なにも返せずにいると、彼はなんでもないように、淡々とつづけた。


「ちょー最低。俺もだいっきらい。親父も、まわりのオンナも」


それから軽い調子で、でも…、と呟く。



「それでも、たったひとりの、親なんだよなぁ…」



わたしは義仲の背中を見つめた。

彼は振り返らなかった。まっすぐまえだけを見て、ただストイックに自転車をこいでいる。





…………義仲は。





不意に、思った。





義仲は、本当は、とても、寂しいひとなのではないか。


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