《MUMEI》
別々に昼食
その日の昼休み。


「お昼今日も一緒に食べるでしょ?」


志貴が拓磨を昼食に誘うという、前代未聞の出来事に教室が揺れた。


(いつもなら、これだけで復活するのに…)


顔を上げた拓磨は、隣にいる俺を見て


「…男、近くにいるの、嫌だ。二人っきりがいい」


と言い出した。


(…気持ち悪いぞ拓磨)


志貴は鳥肌が立ったようだった。


(まぁ、たまにはいいか)


「志貴。俺、今日は図書室に用事あるから、司書室で食べるから」

「え?祐也?」

「よし!」


俺は困惑する志貴と、明らかに復活した拓磨に背を向け、教室を出た。


「失礼します」

「あら、珍しい」


司書室にいたのは、弁当を食べている洋子先生だけだった。


図書室は飲食禁止だが、この部屋は、飲食可能だった。


「図書委員は?」

「またサボりなのよ、あの子!」

「またですか…」


図書委員を真面目にやらないのは、朝倉奈都だけだった。


「図書当番やるかわりに、ここでお昼食べてもいいですか?」

「大歓迎!」


(今だけ奈都に感謝だな)


図書当番の席に座った俺は、昼食を食べ始めた。

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