《MUMEI》 . …………やっぱり、空耳? わたしが彼から目を逸らそうとしたとき、 義仲が体勢を変えないまま、つづけた。 「ヒドイ目に合わせて、ケガまでさせて……悪かったよ」 わたしは目を見張った。信じられなかった。義仲が、わたしに謝っているのだ。 心許ない、抑揚。 放っておけば、消えてしまいそうなほど、頼りない、その声に、 なぜか、わたしの胸がざわめく。 義仲は、そのまま黙り込んだ。やっぱり、わたしを見ようとしない。 その彼の姿が、 本当に、小さな子供みたいに、 寂しそうに見えて、 次の瞬間−−−−。 わたしは身を乗り出し、彼の顔を両手で包んで、無理やりこちらへ向かせた。 . 前へ |次へ |
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