《MUMEI》
サッカー部の応援
「ところで田中君は、サッカー部、決勝は応援に行くの?」

「『は』?」

「同級生の一部や、サッカー部のファンの子達は、地区大会の一回戦から応援行ってるから」

「そうなのか?」


(知らなかった)


俺は、本当に周りをよく見ていないようだ。


(ん? でも)


「志貴は行ってないよな?」


それくらいは把握しているつもりだった。


「津田さんは、全国大会行ったら応援行くって決めてるみたい。

…だけど」

「だけど?」

「お昼のあの感じなら、『応援来て』って言われそう」

「あり得る」


教室での、変に甘えた拓磨を俺と緑川は知っていた。


「知らない話はするな」


知らない鏡月は、すねていた。


「もし、津田さんが行くなら田中君は行く?」


(そうだな…)


「拓磨が嫌がらなければ」


俺が行く事で、拓磨が試合に集中できなかったら


(多分、真司に殺される)


本気でそう思った。


そして、予想通り拓磨に泣き付かれ、志貴は決勝の応援に行く事になり


俺は、真司に頭を下げられ


一応、会場には応援に行かない事になった。

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