《MUMEI》
決勝までの六日間
この


日系ブラジル人達で結成されたサッカーチームとの試合形式の特訓は


決勝相手が決まってから、始まっていたらしい。


日系ブラジル人の彼等は、日本の企業で働いているので日本語も喋れるし、理解できるが


相手に指導できるほど、語学力があったのは


拓磨と同じポジションの、カルロスだけだった。


「だから、俺が呼ばれたんですね」

「そう。試合中でも通訳できたら叫んでね」


そう言って、審判役の屋代さんはグラウンドの中央に走っていった。


(まさかこんなところでも、演劇部で鍛えた喉が役立つとはな)


通訳する俺の声は、拓磨以外の部員達に好評だった。


それでも拓磨は、俺からアドバイスを言われる事は無いから、普段よりは落ち着いていて


ちゃんと、していた。


こうして、俺は月曜日から金曜日まで、叫び声を上げ続けた。


さすがに、最終日は、少し声量が落ちた。


土曜日は、ストレッチだけだというので、俺はグラウンドに行かなかった。


そして、いよいよ


日曜日


試合当日に、なった。

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