《MUMEI》
二発
 目と目で会話などできるはずもなく、ただ二人は視線を合わせたまま、それぞれになにか考えているようだ。

しかし、お互いにいい考えが浮かばない。

緊迫した空気が、倉庫内を包んでいる。

「あー、なんか、めんどくさいし。もう終わりにしようか」
唐突にミサが沈黙を破った。
カチっと音がする。
「待て!勝手に終わらせるなよ!」
「……さようなら」
ミサは微笑んだ。
ユウゴはギュッと目を閉じた。

「ユウゴ!!」

……パン!

……ッガーン!

二発の銃声とユキナの悲鳴がユウゴの頭の中に響いた。

頬に鋭い痛みが広がっていく。

………二発?

ユウゴは恐る恐る目を開ける。

「……あんた、な、んで?」
ミサは茫然とした表情でユウゴを見ていた。

……違う。

ユウゴの後ろに倒れている由井を見ているのだ。
その右腕からは、大量の血が滴っている。

「へ、へへ。……大当りってか」
「由井!?」
 ユウゴのすぐ脇で死んだと思っていた由井が、倒れたまま、息も絶え絶えに笑っていた。
その手にはショットガンが握られている。
「……っ死んだんじゃ?」
右腕を押さえながら、ミサは顔をしかめた。
「甘いな。俺は、…ゴキブリ並に、しぶといぜ」
「……この死にぞこないが」
 ミサが左手で落ちた銃を拾おうと、腰を屈める。
その隙を見逃さず、ユウゴは銃をすばやく取り出して、躊躇せずミサに向けて引き金を引いた。
「…ギャ!」
弾はミサの左肩に命中したらしく、彼女は後ろに吹き飛んだ。

さらにもう一発と構えた次の瞬間、ミサは信じられないほどの速さで起き上がり、走り去ってしまった。

「ま、待てよ!」
ユウゴが後を追おうと倉庫を出かかった時、ユキナに呼び止められた。
「由井さんが……」

そうだ。
あの女に構っている場合ではない。

ユウゴは慌てて由井の元に駆け寄った。

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