《MUMEI》
可愛い
「知りたいですか?」

「え?」

「何が見えるか」

「え、ええ。知りたいわ」

羽田がそう答えると、凜はこっちへ来いというように、手を差し延べてきた。
羽田が近づくと、凜は羽田の肩に手を置いた。
すると、さっきまで誰もいなかったはずの羽田の前に、少年が一人、キョトンとした顔でこちらを見て立っていた。

「きゃっ!」

悲鳴をあげた羽田の足元には、猫のような狐のようなよくわからない生き物が走り回っている。
よく見ると、その背中には羽のようなものが見える。

「なに、なんなの?」

混乱する羽田の肩から、凜は手をどけた。
すると、その変な生き物も少年の姿も消え失せていた。

「な、なんだったの?今の」

羽田は凜を見た。

「見えました?」

涼しい顔で凜は言う。

「み、見えました」

動揺しつつ、頷く羽田。

「それで?」

「え?」

「どう思いました?気持ち悪い?」

そんなこと言われても、あんな一瞬では、よくわからない。
しかし、あの変な生き物。あれは……

「可愛かった」

「……え?」

珍しく、凜が妙な表情で聞き返してきた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫