《MUMEI》

「追い掛けるなよ。」

乙矢に言われて出した足を引っ込めた。


「変わらなかった」

結局、互いに傷付いただけだ。


「安西が自分で解決することだ。」


「うん……」

俺が安西を追い掛けても同じことの繰り返しな気がする。
乙矢は言葉じゃなくてこういうそっと、手を握ってくれるところが一番優しい。



「そういえば、北条って人が入院してた。あの馬鹿の家と同じ名字だよな?」

馬鹿=七生である。
北条……まさかね。

なんて、思いながら院内をしっかりチェックしている自身が憎い。

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