《MUMEI》 危機一発そこからの敵の動きは早かった。 それは、初めて見せる、チームプレイ あっという間の、早いパス回しに 拓磨が、守が、サントスが振り回された。 (もうだめだ!) サントスが前に出ていた分 がら空きになっていたゴールの隅に、相手がパスをするように、打ったボールが向かう。 「うおぉぉぉ!」 ボールがゴールラインに触れる一歩手前で 真司が倒れながらも、必死に足を伸ばし、その爪先がボールに触れ ボールの軌道が、ゴールから外れた。 「まだよ!」 画面に向かって希先輩が叫ぶように こぼれたボールに、人が集まる。 その時 「拓磨!!!」 (この声) 画面の中から、志貴の叫び声が聞こえた。 それは、この試合が始まって初めて聞こえた 志貴の、拓磨に対する応援だった。 やがて、集団から、一人の選手が飛び出した。 (よし!) それは、拓磨だった。 拓磨はそのままドリブルで、相手ゴールに向かっていく。 「おい!あいつDFだろ!?」 「でも、中学時代、DFでも一回ハットトリックしてるわよ?」 焦る鏡月に、緑川が説明していた。 前へ |次へ |
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