《MUMEI》 祭りのあと。最近、桃郷は俺の親父の元に出入りするようになったと聞かされていたから、それは覚悟していたんだが。 桃郷の野郎があんな奴の側に付いているなんて、知らなかった。 「武のお友達…悪い人じゃないよ…」 「…それは俺が良く分かってるよ」 心配そうに俺の顔を覗き込んでいるかなたの肩を抱きながら、冷えた横顔にキスをした。 「ん…ねえはるちゃん…今日は…」 「コイツんトコ泊まるんだろ…」 「うぅん…違うの…」 かなたはそう言ったかと思ったら、俺の手を離れて下駄をカラコロと鳴らしながら前に走ってった。 「おい、急にどうしたんだよ、また迷子になるぞ」 そう呼びかけると、かなたはこっちを振り返りながらアホな事を言った。 「アキラさんトコ泊まる」 「ばッ…バカかお前は!」 「だって…アキラさん…俺の事心配してるかもしれないから…」 かなたはアキラさんが自分の為に身体を張ってはっきりと言ってくれた事が嬉しいらしく、それのお礼も言いたくて今夜泊まりに行くと言っていた。 「いいよね、武?」 「…あぁ」 「あんまり遅い時間に行くとメーワクかもしんないから、はるちゃん先帰るね」 「転ぶんじゃねぇぞ」 俺も…桃郷の事があって独りになりたかったから、丁度良かったのかもしれない。 親父の事務所に出入りしていると聞いて、その道に進むんだな…と分かってはいたものの、現実そうなると辛い。 アイツと俺は、別の道を歩き始めたんだな。 「…え…もちろん大丈夫だけど///」 「やったぁ♪」 やっぱり一人で行かせるのはちょっと心配だったんで、学園の寮に寄ってからアキラさんの家の前までかなたを送ってくと、玄関先で戸惑うアキラさんとちょっと複雑な顔をしている克哉さんの目の前でキスをして目一杯抱きしめ合った。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |