《MUMEI》
こうも極端に予想を裏切られると、
リツは唖然とするほか、無かった
フルアは滑るように二人に歩み寄った
不思議と重力を感じさせない、歩み(背丈は二人とあまり変わらず、少し高いくらいだ)
[君達の旅立ちはまもなくだ]
そして紫水晶の瞳を
[その時を決めるのも、私の役目…少し話をしよう]
リツに向ける
[何故]
やはり唇は動かさずにフルアが問う
[人間以外の生物は、今でこそ変異してしまったが…
何故翼を失わなかったか。…分かるか?]
「何故“失わなかった”か?」
リツは怪訝そうに顔をしかめた
「俺は生まれてから今まで、変化していない生物の中でも…翼の生えたイヌだとか、ネコを見たことはありませんよ」
ペインもだ。頭が二つあっても、翼は無かった
不意に
「?」
フルアの右手が
リツの左頬に添えられた。
[お前はそのとき…本当に、
“見ようとした”のか?]
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