《MUMEI》

予想外の俺のパスに、
一瞬目を見開いた先輩。


だがそれは、
相手も同じだった。


一瞬だけ、
動きが止まる。


先輩はそこを突いた。


まず自分の右足と左足の間で、
素早いボール移動を繰り返す。


相手はその素早い動きに気を取られるが、
直ぐに我に返る。


しかし、時すでに遅し。


先輩はボールを人1人分越える程度に蹴り上げると、
落下地点に移動した。


視界から消えたボールを、
闇雲に探す相手を抜き去り、
ボールをキャッチ。


そのままゴールまで突っ走る。


上手い!!


その場にいた誰もが、
先輩のプレーに見とれていた。


ゴール手前で敵1人と出会い、
此所で俺にパスが回る。


胸の高鳴りがピークに達していた。


俺はそのボールを、
ゴールの左下コーナーへ放つ。


キーパーの予想は外れて、
手に触れることも出来ずにゴールを許した。


ついにゴール!!


審判のコールが大きく響く。


その時の歓声と言ったら、
言葉で言い表すことも出来ないぐらいのものだった。


俺は両腕を振り回しながら、
倉木さんの元へ駆け出した。

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