《MUMEI》
きまらないヒーロー
この試合のヒーローを挙げるとしたら


後半、意外な攻撃を仕掛け


敵を混乱させた、拓磨だと


(思った、のに…)


「「あーあ」」


頼と厳は双子らしく同時にため息をついて頭を抱え


「馬鹿だな」

「ね」


鏡月と緑川は呆れ


「…」

「希?」


希先輩は、珍しく怒っていた。


「せめて、挨拶してから行けば良かったのに」


石川が言うように、拓磨は


試合終了と同時に志貴に


抱きついて


キスをしたのだった。


「でも、ほっぺたなのにあれはやり過ぎじゃない?」


アメリカ人のエイミーには普通のスキンシップに見えたが


画面の中も外も、そう見てはいないし


何よりも、志貴が一番


…キレた。


整列した拓磨は


両頬に、志貴の手形が残っていた。


(丈夫なヤツだな)


それでも拓磨は笑っていた。


後日、拓磨が笑いながら


『志貴ったら照れ屋でさ』


と、言う度に


志貴が拓磨にビンタし、拓磨が喜ぶので


拓磨にM疑惑が浮上していた。


『俺は志貴が好きなだけ』


そう言う拓磨は、ほんの少しだけかっこよかったが、調子に乗るのを恐れて誰も何も言わなかった

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