《MUMEI》

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川崎先生は腕を組んで、仁王立ちしながら、ほほ笑みを浮かべて男子生徒たちを見つめていた。

けれど、そのセルフレーム越しに見える彼の双眸は、いつになく冷ややかなものだった。


川崎先生は表情を崩さずつづける。


「後輩の女の子に寄ってたかって、ずいぶん楽しそうだな」


先生の言葉に、彼らは慌てた様子でわたしの襟を放し、少し距離を取った。


「なんでもないッスよ!」


引き攣った笑顔を浮かべながら、な!?と彼らは頷き合う。

川崎先生はジロリと彼らを睨みやると、低い声で、だったら…と、唸るように言った。


「はやく教室へ戻ったらどうだ。授業、始まるぞ」


男子生徒たちは、先生の声音に少しビビったようで、おとなしくその指示に従い、いそいそとその場から立ち去った。

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