《MUMEI》
断面の断片
草加弥生は当時の事件を取り上げた記事を読みあさった。

亡くなった子供のことは事細かに書かれ、周囲の涙を誘うようになっている。

犯人は腹部を刺し自殺。彼と親しい友人もおらず、さしておかしな挙動もなかったという。何がどうして、自分の子供と同い年の子供を殺して首を切り取ったのだろうか。

それ以前にその首は何処へ行ったのか。




「考えすぎは良くない。」


「ああ、ごめんごめん。煮詰まるとこれだ。」
弥生は恋人と口付けを交わす。

八年前に恋人が遭遇した事故がきっかけで知り合って家族のように接していくうちに恋人に昇格していた。

「忘れ物取りにきたんでしょう?」


「そう、まだ捜査続きそうだし。当分は戻れないかもしれない。」


「掃除しにたまに行く。」
恋人の指から部屋の合鍵が揺れている。


「ありがと





       紅蓮。」

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