《MUMEI》
生きたかった…
柊の境遇を知り、俺の瞳からは涙が零れた。そして、後悔した。あのとき恐怖に勝てずに柊を見捨ててしまったことを…。




「私は、死んだ後すぐに彼らを殺したの。彼氏ったら、怯えてたわ。"お前は死んだはずだ!"とか言って。いい気味ね。それでね、彼らを殺しても私の心は満たされなかったの。それだけじゃ足りなかった。
見捨てたくせに、あの時の事など気にもせず、安穏と過ごしてるあんた達も憎くなった!"私は死んだのにどうして!"って。だから、私が死んだのと同じ年齢の時に殺そうって決めたのよ!!…月代君は特別だよ。あの時、一番助けようとしてくれたからね。一番長生きさせてあげるし、私が死んだのと同じ日に殺してあげるの」

「特別…?俺の家族が怪我したのも特別だからか?あれも柊がやったんだろ?」

「そう、私がやった。理由なんて簡単なことだよ。一番長生きできるんだから、苦しみも一番じゃなきゃ、不公平でしょ?」




柊の発言に言葉を失った。
俺のせいで家族が…っ!!

家族に怪我をさせたことは許せない。でも、俺にはそれを言う権利なんて、あるのか?




「…柊、復讐してもお前は救われないよ。一生憎しみを抱えることになる」

「うるさい!私は死んだんだ!殺されたんだ!!人生が一瞬にして終わった私の辛さがお前に分かるはずがない!!あんた達が助けてくれれば、生きてたかもしれないのに…!!」








――――!!


柊が、泣いている…



こいつは、死にたくなんかなかったのに殺されたんだ。
一人の身勝手な男によって。

こいつは、どんなに苦しんだんだろう。


俺達が逃げたから、
助けなかったから、
柊は殺された…


俺達が柊を見捨てたのも、彼女死んだのも、紛れもない事実だ。


でも、やっぱり復讐はいけない。これ以上、柊は人を殺しちゃいけない。





「柊、俺達がお前を見捨てたのは事実だ。もし見捨てなければ、死ななかったかもしれない。取り返しのつかないことだ。ごめん!!…でもな、俺達だって本当にお前を助けてやりたかったんだ。これだけは分かってくれ」

「うるさい…」

「俺達は何もしてやれなかった。けど、だからって復讐なんてしちゃいけない!あの男達のようにただの人殺しになるな!!」

「うるさい!」

「このままだと、お前はいつまでも成仏できない。幸せになれることなんてないんだ!」

「黙れ黙れ黙れ!!そんなことあんたに言われる筋合いなどない!!あんたも絶対に殺してやる!!」




柊の眼は、怒りや憎しみに満ちていた。殺した彼氏に対して、その仲間に対して、俺達三人に対しての怒りと憎しみに…
もう、言葉なんて届かない。でも、それでも俺は…っ!





「もう手を汚すな!復讐なんて意味ない!」

「意味がないことなんてない!私は、私は復讐することでしか幸せを得られないんだ!!!」

「……っ!」

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