《MUMEI》 . 毒づきながら、わたしは乱暴に黒板を消しはじめた。 その背中に、おじいちゃんが、静かに語りかける。 「いろいろと騒ぎになっていますが…」 わたしは手を止め、おじいちゃんの方を振り返る。おじいちゃんはにこやかにわたしを見つめていた。クラス中が、わたしとおじいちゃんに注目した。 おじいちゃんは、穏やかにつづける。 「わたしは、片倉さんを信じてますよ」 意外な台詞に、わたしはぽかんとした。おじいちゃんはわたしの表情を見て、フフフ…、と笑う。 「片倉さんは、成績も優秀ですしね。頭の回転もはやいので、自分をおとしめるような真似は、しないでしょう…」 穏やかな声を聞いていると、なんだか胸がジーンとした。 …………じいさん。 悪かったよ、老いぼれってバカにして……。 . 前へ |次へ |
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