《MUMEI》
危機一髪!
俊介はグイッと凄い力で仁美の両足を掴む。細くてもやはり男。力では勝てない。
「やめて」
両足首も縛られてしまった。手ぬぐいでキッチリ拘束されたら自力ではほどけない。
さらに足をベッドに固定した。これでは逃げられない。
「お願いですからやめてください。何をする気?」
俊介は笑顔で迫る。
「さっきの言うこと聞く?」
「まずほどいて。ちゃんと話しましょう」
俊介は、仕方ないと言いたげな顔で立ち上がると、窓とカーテンを開けた。
「待って、何をするの!」
仁美は慌ててもがいた。アパートの目の前もアパート。窓と窓が近くて、お互い窓を開放したら部屋の中が丸見えなのだ。
「閉めて閉めて」
真っ赤な顔で哀願する仁美。俊介は容赦なくバスタオルを取った。
「キャア」
全裸を晒した。俊介に見られるよりも、窓の外が気になる。こんな姿を見られたら恥ずかしいでは済まない。
「閉めて閉めて、お願いします」
仁美の顔が歪む。隣のアパートの住人に見られて、大家の妻と知られたら、この街には住めない。
「俊介君、何でも言うこと聞くから閉めて」
「ホント?」
「ホントだから、早く閉めてください」
俊介は窓とカーテンを閉めた。仁美は激しく呼吸が乱れた。汗びっしょりだ。
ここは逆らわないほうがいい。仁美はそう思った。何をするかわからない。
「もういいでしょ。ほどいて」
「警察に言う気だね?」
「言わない言わない。絶対に言わないから」
必死の顔の仁美がかわいい。
「君は言うタイプだな」
「許してくれたんだから言うわけないでしょ」
「許した?」
「あなたは心の優しい人だから、すぐに窓を閉めてくれた」
仁美は俊介を熱い眼差しで見つめたが、通用しない。
「口止めに写真撮ってあげる」
仁美は背筋が寒くなり、膝が震えた。
「それだけはやめて。一生のお願いですから」
しかし俊介は携帯電話を仁美に向ける。
「やめて、やめて…」
撮られてしまった。仁美は絶望的な気持ちで撮影の音を聞いた。

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