《MUMEI》
聞こえた呟き
.

わたしは戸惑いながら、金井さんの顔をチラリと伺った。

彼女は真っ青な顔を俯きがちにして、ゆっくりと席に座り直した。


そのとき、彼女の唇から、確かにこぼれ落ちたのだ。


まだ、足りない……、と。




…………『足りない』??




その台詞が気になったが、隣の義仲が、ねーねー!と、しつこく話かけてくるので、そのうち、わたしは金井さんの謎の言葉を、すっかり忘れてしまったのだった。





******





−−−放課後。


帰りのショートホームルームが終わると、みんな帰り支度をして、さっさと教室を出て行ってしまった。


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