《MUMEI》
噂の変質者?
その公園は、ブランコ・シーソー・鉄棒・滑り台と、一通りの遊具は揃っていたが


ベンチと水道は一つだけで


入口から、全てが見渡せるほど小さい公園だった。


(これ…何の木かな?)


その中で一番存在感がある


今は、葉も無く不気味にすら感じる大木に、俺は近付いていった。


「ハァ、ハァ、ハァ…」


(…ん?)


大木に近付く俺の耳に、荒い男の息遣いが聞こえてきた。


「誰か、そこにいるのか?」


俺は足を止めて、大木の方に向かって呼びかけた。


「ハァ、ハァ、ハァ…」


相手からの返事は無い。


(もしかして…噂の変質者、じゃないよな?)


相手はハァハァ言っているだけで、俺に近付いてくる様子は無かった。


(…考え過ぎか)


俺は、普通に考える事にした。


(具合でも悪いのかな?)


そう結論づけた俺は


「あの…大丈夫ですか?」


呼びかけながら、再び足を動かした。


その時


「っ!!」


大木の向こうから出てきた男が、声にならない叫び声のようなものをあげながら


俺に突進してきた。


(やっぱり変質者だったのか!?)

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