《MUMEI》

「お義母様、お体に障ります。」

鮎子さんの言葉から推測すると七生のお祖母さんがヒステリーを起こしているようだ。


「白い絹繊維のものでなければ使いません。何度言わせるのですか?」

お祖母さん……声だけなのに怖い。


「誠に申し訳ございません、お義母様。すぐに代わりのものを用意致します。」

鮎子さんは手際よくタオルを仕舞い込む。
物陰に隠れていたのだが、鮎子さんと目が合ったような気がした。




「ばーちゃーん、怒鳴んなよ!シワシワになるぞー!折角お上品な顔立ちなのに崩れたら勿体ない!」

七生の声……!物陰でさらに体を小さくする。
そして世間の狭さを恨んだ。
別れたばかりなのに酷い仕打ち。


「貴方は言葉遣いをもう少し学習すべきですね。」

鮎子さんの時よりやや和らいだ口調になったようだ。


「ごめん、ばーちゃん。
でも、元気そうで良かったわ。」

そうか、七生のお祖母さん入院してたんだっけ……。


「これで、曾孫の顔でも拝めればもっと回復しますけれどね?」

瞳子さんと七生の子供……さぞ、可愛らしい子供だろうな。

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