《MUMEI》
勘違い
(えぇっと、確か…)


俺は、大蔵先輩から教わった記憶を頼りに


ホモの変質者を、一本背負いした。


「うおっ!?」


(うまくいった)


そして俺は、変質者を押さえ込みつつ、素早く携帯を取り出し、警察に連絡を…


(ん? メール?)


する前に、大蔵先輩からのメールを読んだ。


「えっ…」


そのメールを読んだ瞬間、俺は焦った。


メールには


『今、変質者一本背負いしてやった!これで街の平和は守られたから、安心しろ!』


とあったのだ。


(『今』って…)


大蔵先輩からのメールは、数分前


俺が、投げ飛ばした男性の息遣いを聞いていた頃に、送られてきていた。


「…あの、すみません。間違えました」

「…いーえー」

「大丈夫、ですか?」

「あぁ、受け身とったから。腰はちょっと痛いけど、これなら支障無いよ」


(いい人だ)


俺が投げ飛ばしてしまった相手


宗方是清(むなかたこれきよ)さんは、落ち着いた大人の男性で


明るい場所で見ると、美形だった。


「本当に、すみませんでした」


一本背負いした理由を説明し、俺は改めて頭を下げた。

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