《MUMEI》
お泊まり
「ぶえっくしょーんっ!!」


(今の、くしゃみか?)


俺の周りには、宗方さんのように豪快なくしゃみをする人間はいなかった。


「うー、寒いね」

「そうですね」


(そういえば…)


「宗方さんは、この辺の人間じゃないんですよね」

「うん。この辺ではないよ」

「車で来たんですか?」

「いや、電車。終電で帰るつもり」


(え?)


「…もう終電過ぎましたよ」

「え!嘘!?まだ十二時だよ!」

「この辺の最終十一時台ですよ」

「…マジですか」

「マジです」

「宿泊費用無いんで…普通に野宿しようと思うんだけど、この辺寒いですよね」

「ですね。ちなみに明日の朝は雪だそうです」

「マジですか…」





宗方さんは、俺をチラチラ見てきた。


…捨てられた、子犬のようにうるんだ瞳で。


「うち、来ますか?」

「親御さん、大丈夫?」

「親、いないし一人暮らしなんで」

「……………………

これは浮気じゃないよね!?」

「…違うと思います」

「だよね! じゃあお邪魔します」

「ハァ…」


こうして、俺は一晩宗方さんを部屋に泊めた。

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