《MUMEI》
ありえない事実
「じゃあ、これで…」

「あの!」

「何?」


(う…)


俺は、やっぱり睨んでくる美作さんに、怯みながらも


「あの。俺、宗方さんと何もなかったですから。

宗方さん、美作さんの事ばっかりで、一途だから、一生懸命だったから、協力しただけですから」


言っておきたかった事を言った。


「そんな力説しなくても、わかってるし」


俺より背が高い美作さんは、優雅に、俺を見下ろしながら笑った。


「それからそんなにかしこまらなくていいから。多分そんなに年違わないし」

「そうなんですか?」

「俺、今、高三」

「… お、同い年!?」

「あ、そうなんだ」


(ありえない落ち着き方なんだけど!)


「そろそろ行こうよ」


(そしてあっちは落ち着きないんだけど!)


「じゃあね。変なオッサンが迷惑かけて悪かった」


そう言って、美作さんは宗方さんを連れて帰っていった。


ちなみに残りの三人は、先に帰っていた。


(世の中、普通じゃない人って結構いるんだな)


自分は意外と地味なのかもしれないと感じた


そんな、冬休みの出来事だった。

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