《MUMEI》 「先輩は飲まなくても大丈夫なんすか?」 先輩の首筋や顔からは、 まるで滝のように汗が流れ出ている。 俺よりも数倍走ったはずだ。 ホントに大丈夫だろうか? 「俺? 俺ならもう飲んだよ。」 そいつで、とでも言うように、 先輩は俺が手にしているドリンクを指差す。 「え、これでですか?」 「おう。」 どうりで軽いと思った。 俺は豪快に口を開けて、 液体を流し込む。 ん? 「先輩……。」 「なんだ?」 「二口で無くなりました。」 「あーそう? そりゃ悪かったな。」 「このボトル、俺のっすよね?」 「ああ、バレた?」 「先輩のは?」 心なしか、 先輩の表情が硬い。 「ない。」 「へ!?」 「全部飲み干した。」 「ええ!!?」 先輩はすまなさそうに、 だが笑顔で両手をついて謝る。 「わりぃな! 帰りなんかおごるからよ!」 それを聞いて、 ふて腐れていた俺は一気に心弾んだ。 「マジっすか!? じゃあたこ焼きで!!」 「そんなもんここにある訳ないだろ。」 前へ |次へ |
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