《MUMEI》 スター扱い全国大会一回戦敗退のサッカー部員達は、冬休み明け、普通に登校してきた。 …校門までは。 (すごいな) そこには、あり得ない光景が広がっていた。 「おはようございます、拓磨先輩!」 「キャー、やっぱり背高い!」 サッカー部員達の中で、一番女子生徒に囲まれたのが、拓磨だったのだ。 (まぁ、真司は彼女いるし、サントスは、小柄だしな) 更にいえばサントスが、穏やかな二、三年の女子生徒に囲まれ、弟のように扱われているのに対し 「こ、こら、俺は志貴に挨拶を、て!志貴!志貴!志貴さん、志貴様! 助けて!」 「わ、やっぱり足硬い!」 「どれどれ!?」 「うわーん、セクハラ!」 拓磨は勢いがある一年女子や、二、三年のいわゆるギャル系に囲まれて、セクハラを受けていた。 「…助けなくていいのか?」 志貴は普通に俺の隣を歩いていた。 「いいの。それより、『愛の道祖神事件』詳しく教えて」 志貴は、その後もスター扱いされている拓磨を全く見なかったが (一応、気にはしてるんだな) 常に握りしめられた志貴の拳は、時々、怒りに震えていた。 前へ |次へ |
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